「お客様の一生に寄り添う」
世代を超えて人の繋がりを大切にする小野写真館さんを取材してきました。
会社紹介
小野写真館は1976年7月に創業された茨城県ひたちなか市の写真館です。従業員数はアルバイト・パートを含め170名。茨城県内ではひたちなか、水戸、日立を中心に16店舗、柏、東京、横浜、川崎へも14店舗を展開しています。
設立当初は、七五三、家族写真、成人振袖写真、ブライダル写真を中心に、結婚式場の下請け業務、学校アルバム、ピアノ発表会、建物撮影など、写真のデパートのような存在となっていました。
現在の主な事業としては、フォトスタジオ事業、成人振袖事業、ブライダル事業があります。
2006年に現社長の小野哲人氏が株式会社小野写真館に入社し、「アンシャンテ」を立ち上げ、ブライダル事業がスタートしました。戦略的な視点から、グランフォト小野写真館の事業領域をスタジオ写真のみに絞り、撮影内容も七五三、家族写真、入園・入学、マタニティなどのポートレートに特化させています。
また、2010年には成人振袖卒業袴専門のレンタル店&成人式卒業式専門の写真館の二十歳振袖館「Az」も立ち上げました。
会社見学
小野写真館では、人生の節目である成人式や結婚式などのイベントでの写真撮影を事業としています。今回の会社見学では、結婚式、七五三、成人式といった人生の大イベントに沿った順番で案内していただきました。
初めに、小野写真館がブライダル事業として経営する、「アンシャンテ」を見学しました。「アンシャンテ」はウェディング複合施設です。ブルックリンをモデルとしたウェディングレストランや、刺繍糸を使用した可愛いモニュメントが置かれた控え室などを案内していただき、見る度に美しさに驚きました。
ドレスショップ「ブランシェ」では、トレンドを取り入れた種類豊富なウェディングドレスのレンタルを行なっています。ブランシェの社員さんは、「妥協しない一着」を決めていただけるように、何度もお客様と話し合いを重ねます。そして、使わなくなったドレスは、近隣の専門学校へ無償で提供しているそうです。このように、お店側の利益にはならないとしても、お客様のニーズに答えるのが小野写真館の強みであると感じました。
次に案内していただいたスタジオでは、主に七五三と成人式の撮影が行われています。衣装のレンタルもしているため、部屋一面に数え切れないほどの衣装が置かれており圧巻でした。撮影で使われているセットの中には、社員さん自身が考案して作った壁紙もありました。
社長インタビュー
代表取締役 小野哲人さん
元々、起業して上場することを目標にしていた小野社長。家業の小野写真館を継いだ後も、熱い情熱とアイデアで突き進んでいます。
―ご両親が経営していた小野写真館は、どのような経緯で継いだのですか。
もともと実家の小野写真館を継ぐつもりは全くありませんでした。学生の頃から大きなことがしたいと強く思っていて、大学卒業後は金融機関で働き、しっかりと実績も出していました。しかし、このままでいいのかとふと立ち止まって、長男の自分が小野写真館を継ぐことを決意しました。
やるからにはしっかりやりたかったので、写真の基礎を学ぶためにアメリカの学校へ1年半留学。留学中に、新潟県中越地震が起きたことをネットニュースで知りました。被災者が避難する際に、真っ先に手にしたのは、財布やケータイではなく、写真だったそうです。この時に自分の仕事を誇りに思い、写真の価値を世に広げたいと思いましたね。そして、帰国後に小野写真館を継ぎました。
ー大切にしていることはありますか?
人材教育を一番大事にしています。死ぬこと以外かすり傷だから、失敗も大事な経験値。躍進を目指す人材こそが最大の資産だと思っています。
―どのような人と一緒に働きたいですか?
それぞれの個性や目標を追っている人ですね。他には、経営理念に共感してくれる人かな。入社式では、新入社員に向けて3時間話しましたよ(笑)。お客様と良い関係を築くには『思い』と『熱量』が必要なんですよね。
―社員に共感してもらうためにしていることはありますか。
年に3、4回研修合宿を行っています。人数が多くなると、どうしても気持ちが薄れてしまうんですよね。だから、考えをすり合わせるという意味でも研修合宿を行っています。
社員インタビュー
1人目:
sheAco事業本部成人振袖事業 二十歳振袖館Azひたちなか本店
須能理彩さん
須能さんは茨城キリスト教大学OGで、新卒5年目のカメラマン。
カメラの知識はゼロでしたが、「人が好き・緑が好き・茨城が好き」と小野写真館に入社されました。
―これまでの仕事内容を教えてください。
入社して2年間はキッズ事業の「グランフォト」、その後3年間は振袖事業の「Az」に勤務しており、現在に至ります。カメラ初心者だったので、入社1年目はアシスタントとしてスタートしました。2年目からは本格的にカメラマンとして撮影、データ処理、スライドショー作成をし、SNSの更新もしてます。
―カメラ初心者なのに、どうして小野写真館を選んだのでしょうか?
私は人と関わることが好きで。また、茨城みたいな田舎が好きなんです。大学時代には、経営学科の数人で地域貢献サークルを立ち上げました。当時から「誰かのために」と、地元に貢献したい気持ちがあったんだと思います。学校の先輩が小野写真館に勤務していて、学校で求人を見つけたのも一つのきっかけです。
―グランフォトのカメラマンであると、色んな子と接しますよね。
例えば、写真を撮られるのが苦手な子がいたらどうしているんですか?
その子の興味を引き出すために色んな質問をしますね。そこで話していくうちに、クスッとしてくれる瞬間があるんです。その一瞬を逃さずカメラに捉えています。
短時間のコミュニケーションで大変さもありますが、笑顔に・幸せになってくれると、やりがいを感じます。
―次にやってみたい事業はなんですか?
ブライダル事業に挑戦したいです。
配属場所は会社が決めますが、社員の「こんなアイデアがある」「やってみたいことがある」という思いを吸収してくれる環境が整っています。
―今後お仕事を続けていく上での目標はなんですか?
子ども・大人問わずに、かわいいとか、かっこいい写真よりも、あたたかい、自然な雰囲気の写真を撮っていきたいです。どんなお客様であっても笑顔にできるカメラマンを目指したいと思います。
2人目:
sheAco事業本部成人振袖事業 二十歳振袖館Azひたちなか本店 スーパーバイザー
小島めぐみさん
小野写真館に入社して13年目のベテラン社員。現在は、新人社員の研修を担当しています。
人に合わせて教えることを大切にされています。
―「Az」ではどのようなお仕事をされているのですか。
以前は美容師として7、8年サロンに勤務していました。その後、「Az」に入ってからキッズ、ブライダルのヘアメイク、着付けを担当し、今は研修を担当しています。
―新入社員の方は、どのような方が多いですか。
素人:専門卒が1:1くらいの割合で入社してきます。知識量や器用さなど、様々な人が入ってきますよ。その人に合わせて必要なことを教えるので、最終的にはあまり差はなくなります。
―職場の雰囲気はどうですか。
主婦が多いですね。子供のために休むこともあるから、若手は大変かも。でも主婦が多い分、育休や産休から戻ってくることにも慣れてるから、雰囲気が良くて戻りやすいと思います。
―最後に、私たちにメッセージをお願いします。
挑戦できる環境が整っているので、やりたい事やなりたい像が決まっていたら楽しいと思います。
3人目:
ブライダル事業部 サブマネージャー
松田和之さん
入社9年目。ブライダルのサブマネージャーと人事のリクルーターを担当しています。
体育教師の道から、たまたま見つけた小野写真館へ未経験で入社されました。
―小野写真館を知ったきっかけは何ですか?
私は元々、高校の体育科教師を目指していたのですが、自分の中に何か違和感があって。そんな時、やる気と気合について書かれた小野写真館をフリーペーパーで見つけました。それがきっかけでしたね。
―松田さんのご家族は皆さん公務員とのことですが、今のお仕事についての反応は?
反対されていましたね。今では少しずつ認めてもらえるようになりましたが、家族や親戚からもっとかっこいいと認められるようになりたいですね。
―松田さんにとって「かっこいい」とは?
自分の仕事に自信を持つことだと思います。世の中に必要とされ、その道のプロとして自分を貫く人になりたいです。
―松田さんにとって社長はどのような存在ですか?
“光輝く5才児”ですね。人を惹き付ける力を持っています。社員たちが失敗しても見捨てることはない、憧れの存在です。
私の採用面接では、社長が3時間に渡って写真の価値や会社の理念について、想いを伝えてくれました。目的に賛同していますが、社長とは別の、自分なりのアプローチで達成したいと思っています。
―採用に関して、どのような人材が欲しいですか?
まずは会社の掲げる理念を共有できるかどうか。また、自分の長所、短所を把握できる人がいいですね。
ワークショップ
今回のワークショップでは、「社員同士の仲を深められるアクティビティ」を考えました。
小野写真館では、内定者を対象に研修を行っています。会場となるホテルで行うアクティビティを考えました。
まずは、2グループに分かれ、付箋に思いつく限りアイデアを出し合います。
カードを使ったゲームで盛り上げる、ダンスなど身体を動かして緊張感をほぐす、お互いを知れるようなクイズをするなど、様々な種類のアイデアが出ました。そして、各グループで出たアイデアを発表し、最も良いと思うアイデアを1つずつ選びます。
1つ目のチームが選んだのは、自己紹介&記憶ゲームです。順番に自己紹介をしていくのですが、自分より前に自己紹介をした人の名前を全部言ってから、自分の自己紹介をするというルールです。そのため、後になればなるほど、覚える数も増え大変になります。しかし、緊張感も相まって盛り上がるゲームです。
2つ目のチームは、ダンスを利用して仲を深めようと考えました。体育祭のフォークダンスのように二重の円を作り、簡単なダンスを踊ります。そしてペアを入れ替え、その都度自己紹介をするというものです。体を動かすことで緊張が解け、コミュニケーションも取れるという利点があります。
実際の内定者研修では、私達の考えたアクティビティを採用してくださり、盛り上がっていただけたようです。
学生の感想
菅沼柚花(ぬま)
「写真が繋ぐ、家族の思い」私は社長の「写真の価値」についてのお話が印象に残っています。今はスマホが主流となっているため、「写真」という媒体はマイナーな存在です。小野写真館さんは、他の写真館がやりたくないと思うことでも、赤字になっても、お客様が喜ぶことをやってしまうという会社でした。ここまでお客様思いで、関係を繋ごうとする会社があることに驚きました。
社長は熱意を伝えるために、スタッフと面談時間を設けたり、200人ものスタッフの週報に必ず返信したりする。並大抵の思いで続けられるものではありません。小野写真館さんは、面白い考えを持ち、何か発信したい、挑戦したいという人にとって、最大限に自分を発揮できる場所だと思いました。まだ自分は、将来何の仕事に就こうか迷っています。しかし、小野写真館さんを取材して、産休・育休等の自分のライフスタイルに合わせられることや、新しいアイデアを形にできることから、理想の働き方をイメージ出来ました。
平梨咲(りさ)
「お客様の一生のタームにお付き合いできる」という言葉が印象深く残っています。お客様が長期的に通える理由は、魅力的なサービスと素敵なスタッフさんがいるからなのだと、取材させていただいて分かりました。サービスを提供するスタッフ側も、人生にお付き合いできるお客様が広がるのは楽しく、仕事に対するモチベーションも上がりそうですし、双方にとってメリットになると思いました。
また、社長と同じ考えや熱量を持った社員さんが多くいらっしゃいました。共通意識をそろえるのは難しく、人数が多いと更に大変だと思うのですが、しっかりと形に出来ている点がすごいと思いました。
そして、挑戦する環境が揃っているという言葉を、複数の方がおっしゃっていました。共通認識が出来ているからこそ、社員さんも安心して自分のやりたいことに挑戦できるのだと思いました。