【学生取材】金砂郷食品株式会社 ー全文記事ー

インターン ひきだし 金砂郷食品 集合写真

素材や品質、そして何よりおいしさにこだわり抜いた納豆を作っている金砂郷食品では、どのようにお仕事をしているのでしょうか!?
まずは会社紹介からどうぞ!

企業紹介

 金砂郷食品株式会社は2009年9月創業で、所在地は茨城県常陸太田市。従業員は46名です。代表取締役社長の永田由紀夫さんは、「水は方円の器に随う」(みずはほうえんのうつわにしたがう)という韓非子の教えをコーポレートマークに取り込んでおり、様々な環境にあっても「水」のように適合し、「水」のように循環、自浄作用のある組織、人づくりを目指したいという思いが込められています。
 事業内容は納豆の製造・販売です。金砂郷食品の製品は安さを追求している商品とは違い、「納豆を食べる、より良い時間をお届けする」ことに主眼を置き、大豆や納豆本来のおいしさを追求しているのです。徹底した品質管理と伝統の製造技術、味を追求する情熱によって本当においしい納豆が作られています。
 金砂郷食品自体は、およそ10年前に創業された新しい会社ですが、昔はくめ・クオリティ・プロダクツ株式会社という会社で、業績が低迷し倒産してしまいました。倒産当時くめ・クオリティ・プロダクツの人事担当だった永田社長が「くめ納豆というブランドを守りたい、従業員の生活を守らなくてはならない」という思いで金砂郷食品として再スタートを切り、納豆本来のおいしさを追求し続けています。
ひきだし インターン 金砂郷食品

会社見学

 金砂郷食品に入ってはじめに感じたのは清潔感です。会社の入口から服や体に付着したゴミを取り除く必要があり、不良品や異物混入を徹底的に無くそうとする品質へのこだわりを感じました。工場内は、さらに厳重な殺菌、除菌をしており、会社全体の考えである「納豆を食べる、より良い時間をお届けする」を達成するための第一段階なのだと感じました。工場で働いている社員も、とても集中して業務に取り組んでいて、働くことへの意欲をひしひしと感じることができました。

社長インタビュー

代表取締役社長
永田由紀夫さん

――はじめに金砂郷食品を創立した経緯をお聞きしたいと思います。くめ・クオリティ・プロダクツが倒産してしまってから、どのような経緯で金砂郷食品を創業されたのですか?
「まず、私は大学を卒業して伊勢甚百貨店に入社しました。大学時代はいろいろ遊んだりしていたけど、働き始めてから真剣に仕事に取り組んで、新入社員代表になれるくらいには頑張っていたね。でも『長男は家を守らなくてはならない、先祖から受け継いだ土地を守らなければならない」という考えの父親に、半ば強制的に百貨店を辞めさせられて、農協で働くことになった。農協でも仕事は楽しんでやれていたから、ほぼ休みなしで働いていたけど、結婚してからは考えが変わったね。29歳で結婚したて、その段階で初めて人生をまじめに考えるようになりました。結婚してから『子育てにどれくらいお金がかかるんだ…』とか『どんな教育を与えてやればいいんだ… 』ということを思って、自分のことではない家族のことを考えた時に、初めて今の収入では自分の思い描く生活ができないという結論が出ました。
 それでくめ納豆に入社しました。当時くめ納豆は社員数200名、売り上げは30億でした。くめ納豆に入社した理由は、無駄なところにお金をかけていないこと、社員が元気で明るいことと成長率が高いこと。何よりくめ納豆が、ものすごくおいしかったので、地元のメーカーで働くのはいいことだと思ったからです。入社して人事に配属されたんですけど、実はそれまでくめ納豆には人事部がなくて。私がくめ納豆の人事第一号でした。1999年に東海村JCO臨界事故が起きて、くめ納豆の評判が風評被害でガタ落ちして、売り上げが大きく減りました。人事として、心を鬼にして、人員整理もしました。でも、結局はダメでしたね。ミツカンさんがオーナー企業で買ってくださって、金砂郷食品を立ち上げることができました。」

――この仕事のやりがいを聞かせてください。
「やっぱりお客さんにおいしい納豆を食べてもらいたい!というのが大きいね。あとは、経営者は従業員の生活に責任を持たなくてはならないこと。それと何より自分がおいしいと感じた『くめ納豆』の味を継承しているのは私たちだと自負しているから、くめ納豆を作ってきた人の思いや、くめ納豆を愛してくれていた人たちの思いを大切にしていきたいね。」

――金砂郷食品で特色のある制度などはありますか?
「まず新賃金制度があります。これは2011年3月から導入したもので、事業運営のための人材育成の方針であったり、給与金額の決定基準や昇格要件などを明確化したものです。やっぱり仕事をするためには、わかりやすい指針が必要だと思うから、この制度があります。この新賃金制度については、食堂に詳しく書いてある資料が置いてあるので、誰でも閲覧できるようになっています。
 それとオープンブックをやっています。毎月一回全社員に対して月次報告を実施して、予算の進捗情報、工場の生産性、クレーム等をすべて共有することで、会社目標を再認識したり、今、会社がどのような経営状況にあるかを知ってもらいます。安心して働いてもらいたいからね。
 あとは、ふれあい保障制度。労災を受けてしまったときや冠婚葬祭、入院や妊娠、介護や家事援助が必要なときに、社員負担なしで給付できるというものがあります。」

――今後の金砂郷食品の目標を教えてください。
「やっぱり金砂郷食品のブランドを確立させること。おいしいと感じる納豆を適正な価格で売るというのが大切だと思う。そのためには徹底した品質管理が必要だし、社員が自分で本気で売りたいという商品を作ることが必要だと考えているよ。
 それと海外販売へも目を向けていかないといけないと思う。今の日本は人口減少、超高齢化、労働人口激減と、どんどん不安定になっている。このまま今の利益を出すのは難しい。そして、日本の伝統食納豆を世界の皆さんに食べてもらいたいから、海外にも目を向けていかなければならないと考えている。」

社長は、金砂郷食品のことだけでなく、社会の仕組みや現代人の問題点、働くとはどのようなことかなど、色々なことを私たちに教えてくれました!本当にありがとうございました!

社員インタビュー

品質保証
高村周平さん

――高村さんは、なぜこの仕事をやろうと思ったのですか?
「前の職場が個人経営のパン屋さんで、パンを作っているときに発酵食品を面白いと感じてここに入ったんだよね。あとはおいしいものをおいしいと言ってくれることは、関わる人全員を幸せにするっていう点もあるね。」

――仕事のやりがいは何ですか?
「自分が関わった商品が店頭に並んでいるのを見つけたときと、職業柄1人で取り組んでいるときが多いので、他の社員と協力して何かを達成したときですね。」

――働きやすいとところはなんですか?
「上司のフォローの的確さ。仕事が手詰まりだったり、多すぎて困っていたりするときに、上司に聞いてみると、提示してくる解決策が先を見据えたものになっていて、それが後の問題の解決策にもつながっていたりしていて本当にすごいんだよね。そういうところを見ていると、俺もこの人みたいになろうと思えるんだよね。」

商品開発
松浦俊三さん

――松浦さんにとっての仕事のやりがいは何ですか?
「新商品を作る過程で一番おいしくなる方法を探っているとき。具体的には、新しい豆を使うときに最適な煮る時間や、最適な納豆菌の量を探っているときだね。」

――くめ・クオリティ・プロダクツと金砂郷食品を比べて、働く環境などは変わりましたか?
「人数がかなり減ったから業務が大変にはなったね(笑)。でも、以前は上に話を通す時に必要な手続きが大変だったから、社長への提案や考えの共有をすぐにできるようになったし、裁量権が広がって、自分のやりたいことがやれるようになったこととかは良かったね。」

――会社に求めることはありますか?
「強いて上げるなら給料かな(笑)。」

営業
斎藤光洋さん

――斎藤さんはなぜこの仕事をやろうと思ったんですか?
「前の職場はスーパーの鮮魚担当で、スーパーに届く魚関係の加工品の製造元に興味が湧いて職場を探していたら、たまたま目に留まったからだね。」

――会社の強みはなんですか?
「人気の極小粒で国産というこだわった組み合わせと、化学調味料無添加なところです。」

――斎藤さんにとっての仕事のやりがいは何ですか?
「自社商品を新しく置いてもらえたときの嬉しさだね。特にうちの商品取り扱い数を0種類から1種類にしたときが一番嬉しい。うちの商品は値段ではなく品質で勝負しているから、差別化はできていると思うし、年々売り上げや取引先も増えてはいるけど、置かせてもらえないところは未だにあるからね。まあ競合相手が大手だと、交渉力を生かして売り場をガチガチに固められちゃったりするので、太刀打ちできないけどね(笑)。」

海外営業
菫健(とうけん)さん

――菫さんはなぜこの仕事をやろうと思ったんですか?
「留学生が対象の学生ドラフト会議というイベントでお話しさせてもらったのがきっかけだね。」

――菫さんは中国人ですが、日本の会社に入るときに不安はなかったのですか?

「留学するときに不安になっただけで、入社する不安はなかったね。」

――この仕事で自分のためになることはなんですか?
「大きい会社ほど部署ごとにかなり専門的な仕事内容になってしまい、得られる学びも少ないと思うけど、中小企業だと仕事内容が多岐に渡るので、学びも多いところかな。」

――菫さんにとっての仕事のやりがいは何ですか?
「やっぱり商談を成立させたときだね。ときには3桁にものぼる企業の中から選ばれたりするから、そのときはめちゃくちゃ嬉しいね。」

ワークショップ

 今回、金砂郷食品で行ったワークショップは、「大学生に向けて金砂郷食品の商品をどのように売ればいいか考える」というものでした。

 二班に分かれ、金砂郷食品の数ある商品の中から二点選んで、その魅力とセールスポイントを書き出していきました。金砂郷食品の納豆やお菓子はとてもおいしく、他社商品より優れた部分・他社商品とは違う部分がたくさんあります。しかし、老若男女問わず惹きつける商品だけに、一つの年代をピンポイントに絞ってしまうと、そこだけに響く部分をなかなか引き出せませんでした。話し合いを深め、商品の個性をうまく引き出すことができ、発表の後に社員から「私たちも気付けなかった新しい魅力に気づかせてもらった」という言葉をいただいて、とても嬉しくなりました。

学生の感想

小木津 祐介
ひきだし インターン 小木津

 私にとっての食品製造業は、働く目的がお金だけの人がいっぱいいるイメージでした。ですが、金砂郷食品にインターンシップして永田社長や社員の生の声を聞いて、考えが180度変わりました。
 まず、永田社長がとても積極的に行動するタイプで、自分が乗り込んで営業することがあると聞いたとき、社員を信用していないから仕方なく動いているのかと疑ってしまいました。でも、そうではなくて会社や社長自身が持っている価値観を可視化して、「社員全員が同じ価値観を抱いて働いて欲しい」という願いが込められているように感じました。
 そして、社員インタビューから、社員は社長を尊敬した上で、その価値観に基づき自主性と誇りを持って仕事に取り組み、やりがいを見出し楽しんでいると感じました。金砂郷食品は、社長から社員へ価値観を共有できているため、社員からの理解を得られ、さらに社員は自主性があって、提案や考えも会社に発言できる。そんなプラスの効果しか存在しない素晴らしい職場で、自分にとっての理想でした。
 インターンシップを通して、業務内容や高い給料ではなく、社員が自ら考えて社長について行く会社が魅力的だということが分かり、とても良かったです。

岡本太郎
ひきだし インターン 岡本
 正直に言って見学に行くまでは食品製造、特に納豆になんて興味もなかったし、一度も就職を考えたことはありませんでした(笑)。しかし、実際にインターンシップに行って永田社長や社員にインタビューしたり、工場内を見学して、おいしい納豆を作ってやるぞ!という熱い思いや、くめ納豆の伝統を受け継ぎたいという強い意志、そして何より自分の仕事に対する矜持・誇りを感じることができました。
 永田社長のお話を伺って社長は“大きな男”だと感じました。金砂郷食品の前身であるくめ・クオリティ・プロダクツの頃から、それ以前の社長の前職である伊勢甚百貨店と農協で働いていた頃から、常に仕事に対して全力で取り組んでいて、金砂郷食品となってからは、人の上に立つ者としての自負を言葉の端々から感じ取ることができました。
 社員も全員が自分の仕事を全力で行っていて、自分もこんな社会人になりたいと感じました。工場案内のときも、社員がとても真剣に作業をしていて、今まで僕が抱いていた仕事のイメージがガラリと変わりました。
 ワークショップでは、大学生に金砂郷食品の商品を売るためには、どのようなマーケティングが効果的かを考えました!納豆と大学生という点をあまりうまく結びつけることができなかったのですが、みんなで協力して納豆の魅力を引き出せたと思います!
 金砂郷食品は、ただ納豆を安く作って儲けようとしているのではなく、高品質のおいしい納豆を適正価格で販売して、皆から愛される製品を作ろうと頑張っている素敵な企業でした!新賃金制度やオープンブックで社員に対して明確な指針を提示していたり、いろいろな保障があったり、働きやすく自分を成長させることのできるとても良い職場環境なのだと感じました!