茨大iOPラボ「地元に戻ってカフェ起業― Tadaima Coffee 和田昂憲さんの実践」リポート

2021年、帰ってきたiOPラボ!
コロナ禍で昨年は開催できずにいましたが、オンラインでの参加も可能となり、開催することができました!
今回のゲストは、地元の日立市にUターンし、カフェを起業した和田昂憲さん。地域への想いや起業のきっかけ、今どんな場をつくろうとしているか、学生時代にどのような活動をしていたのかをお話しいただきました。
そして、会社名でもある「だだいま」に込められた想いについてご紹介します!

ゲスト紹介:和田昂憲さん

そろそろ試験期間も終わり、長い夏休みが始まろうとしている7月28日(水)、iOPラボ「地元に戻ってカフェ起業― Tadaima Coffee 和田昂憲さんの実践」が開催されました。
現地の参加者が4名、オンラインからの参加も3名ありました。
まずは、全員で名前・所属・参加した動機など、一言ずつ自己紹介をしました。
「和田さんのファン」という学生が数名。中には、キッチンカーで日本一周したいという夢を持った学生も参加されていました。

こちらが、スピーカーの和田昂憲さんのプロフィールです。

1990年生まれ。茨城県日立市出身。大学進学を機に茨城を離れる。インターン・ベンチャー企業勤務・リゾートホテル勤務など様々な経験を経た後、愛知県のコーヒー専門店「コーヒーサクラ」に弟子入りし、本格的にコーヒーの道に進む。茨城県北ビジネスコンペティション2016優秀賞の受賞し、帰郷。日立市を中心にコーヒーセミナーを開設する傍ら、クラウドファンディングに挑戦し目標額の189%(113万円)を達成。地元日立市にて「ただいまコーヒー」を開業。

https://iju-ibaraki.jp/feature/people/1466.html

3つの軸

現在、和田さんは「コーヒー」「教育」「行政」の3つの軸をもって地域とかかわっています。その事業についてご紹介していきます。

和田さんの代名詞といえる「ただいまコーヒー」
株式会社ただいま」として、今まで取り組んできた事について、ご紹介いただきました。

「株式会社ただいま」
①コーヒー関連
・競技会への参加(焙煎)
・資格の取得
・現地視察(インドネシア他 コーヒー農園訪問)

②クラウドファンディング
2回のクラファンを達成

③イベント登壇・研修事業
・コーヒーセミナーの開催(2017年~2019年で約1000人)
・社内研修(茨城の企業、NPO、東京)
・学校関連(小~大学、先生向けの研修講師)

④アワード、メディア露出
2018年~2019年で約40媒体掲載
・茨城県北ビジネスコンペディション2016 優秀賞
・ソトコト 2018年6月号 (ローカルキャリア6ページ特集)
・ひたっち (64000部の表紙)

元々コーヒーが好きだった和田さん。
中学二年生で純喫茶にハマり、この頃には「コーヒーを出すカフェを経営したい」と思っていたそうです。2016年には、初めてコーヒー農園へ突撃訪問したそう。

現在は、元有名コーヒーチェーン店員で個展を開いている社員、本業はライターの方など、個性豊かなメンバーで活動されています。

続いて「教育」のフィールドについて紹介くださいました。

「Hitachi frogs」
沖縄で、12年継続してきた”学生の経済的負担なし”で、10日間のシリコンバレー研修を中心とした半年間の人財育成プログラム。
対象は中学~大学院生。

半年間のプログラムを通じて、自分の頭で考え行動する力を身に付け、自分自身が本当にやりたいこと、やりたいことをやるために自分で選択してレールを引く力を得られます。

“井の中の蛙大海を知らず”
学生の皆さんが、限られた狭いコミュニティの中で生きる「井の中の蛙」から脱却し、世界という「大海」視点で考動できる一人になって欲しい思いで名付けられました。

最後に「行政」についてもお話しいただきました。
茨城県内の各行政プロジェクトに参加し、前例主義にとらわれずゼロベースで意見交換をされているとのことでした。

「ただいま」と言いたくなる場所がある幸せ

続いて、起業するまでのエピソードをお話しいただきました。
和田さんは、学生時代。いわゆる「意識高い系の大学生」だったとのこと。
海外のインターンシップに参加したり、大手企業の内定をもらったりと「正直、生意気でしたね。」と笑いながら当時を振り返る和田さん。

就活では、とあるベンチャー企業の社長の考え方に共感し就職を決めたものの、出世を目指して働き詰めるうちに、自身の黒い感情に気づき絶望したそう。
心を病んでしまい、家族にも友達にも相談せず、入社三ヵ月で会社を辞めて沖縄の離島へ逃亡。

リゾートバイトをしながら、その島で出会った人たちと話していくうちに「自分の幸せとは何か?」を考え始めるようになっていたそう。
心身ともに疲弊した和田さんに「ダメだったら帰ってきたらいいよ。」と、どんな状態でも受け入れてくれた家族や友人の存在に「ただいま。と言いたくなる場所をつくりたい」と思うように。これが「株式会社ただいま」の原点となりました。
その後、茨城県北ビジネスコンペティション2016優秀賞を受賞し、クラウドファンディングにも挑戦し、故郷である日立市に「ただいまコーヒー」を開業しました。

実は和田さん、地元のことはあまり好きではなかったとのこと。
地元を出て、京都の大学に進学しキャンパスライフを楽しみながらも、帰省するたびに生まれ育った日立の街が寂れていくことに危機感を覚え始め、「地元を何とかしたい」と思いUターンを決意したとのことです。

#得意とスキルで誰かを助けろ!!

今、和田さんはやることがたくさんあって頭の中はカオス状態。
でも、毎日寝るのが惜しいほど楽しいとのこと。

「好きなことだから苦にならない」→「アイディアがどんどん湧いてくる」→「スキルが磨かれ、評価される」→「仕事がどんどん楽しくなる」

これを「楽しさの無限ループ」と名付けており、学生時代から身につけられたら最強だと思うと力説されました。

とはいえ、まず何から始めたらいいのか。
その問いに「#得意とスキルで誰かを助けろ!!」と学生へメッセージ。

これに対し参加した学生からは「自分にはできそうにない」「得意が分からない」という不安が吐露される場面も。
和田さんとファシリテーターのえぽっくの若松さんから、「小さいことからでいい。例えば、実家に帰ったときに、お風呂掃除をしてみるとか。他人に評価されて、積み重なっていくものなので、まずは手を動かしてみよう。」とアドバイス。
自信の得意を磨いていけば、「これ、できないですか?〇〇さんなら、できそうだと思うんですけどね。」と、周りが自分の得意を活かす方法を教えてくれることもあると話してくれました。
他にも、「志は雪だるま」という言葉があり、「自分の欲求→社員への幸せ→会社が地域に与える影響」へと自然と繋がっていくというお話もありました。

こうした積み重ねが、少しずつ大きな信頼へと変わり、『和田さんにお願いしたい』と教育の現場やおもてなしのホスピタリティという点から講演会を依頼されたり、またその実績が呼び水となり、行政からの依頼が来たりとあらゆるフィールドへ展開されていきました。
和田さんが好きな「コーヒー」から始まり、あらゆるご縁を繋いだんですね。

イベントの感想

学生のみならず、大学職員の方からも質問が相次ぎました。

「意識の高い大学生で良かったことは何か?反対に、こうすればよかったなと思うことはありますか?」という質問に対し、「後悔はないです。やりたいことすべてやっていたと思うので。より出来たらよかったなと思うのは、自分が広く浅くやるタイプだったので、もう少しオタクになるべきだったかな。何か一つ秀でているものを学生時代に欲しかった。そしたら、根拠のない自信が腹の据わった自信になったはず。」と回答し、社会人になった私たちも「うんうん」と頷く場面もありました。

最後に和田さんから学生へ一言。

「下の世代がこれからを創っていくんだなと感じました。学生という特権を大いに使って、自分たちの良い悪いを選択しながら突き進んでください。」とエールを送りつつ、「日立に来たらおいしいコーヒー飲みに来てください!」と宣伝をして、イベントは終了。

手土産のコーヒーを持って、皆さんで記念撮影をしました。

今回の講演が学生の皆さんの「自分の中にある好き」「得意」の軸を見つめなおす機会になればと思いました。